地球を縦に切ってみたら — 足元の土から内核5,400°Cまでの6,371km

庭に穴を掘ったことはありますか。スコップで掘れるのはせいぜい1mほど。でも地球の半径は約6,371km。私たちが普段歩いている地表は、本当に薄い表皮一枚にすぎません。ここでは、その下に何があるのかを、深さごとに辿っていきます。

地球内部の見取り図

0〜5m: 土壌 — 分解と循環が起きている層

庭の地面を掘ると、最初に出会うのは「土壌」と呼ばれる層です。一見ただの土に見えますが、ティースプーン1杯の土の中には、数十億の細菌と数百万の真菌が暮らしていると推定されています。

この層では、ミミズが土をかき混ぜ、ダンゴムシやワラジムシが落ち葉を細かく砕き、最後に菌類が分子レベルまで分解します。落ち葉が土に戻るまでの「分解の流れ作業」が、足元のたった数十センチで毎日進んでいます。

植物の根が届くのも、たいていここまで。草花は深くて1〜2m、樹木でも数m程度が一般的です。ただし一部の樹木では10m以上まで根を伸ばす例も知られています。

5m〜数百m: 地下水と「温度が動かない層」

5〜10mまで掘ると、温度はほぼ一定になります。仙台あたりなら年間を通して約12〜13°C、東京で15°C前後。井戸水が「夏は冷たく、冬は温かく感じる」のは、井戸の水温が変わらず、こちらの体感温度が変わっているからです。

ここから下では、もう地表の気温は届きません。代わりに地球内部からの熱で、深くなるほど温度が上がっていきます。これを 地温勾配(ちおんこうばい) と呼び、目安は 1kmあたり約25°C 上昇。1km掘れば40°C近くまで上がり、温泉が湧くのも納得の深さです。

同じ層を流れているのが地下水です。数十年〜数千年かけてしみ込んだ雨水で、岩盤の隙間をゆっくり移動しながらミネラルを溶かし込んでいます。日本各地の名水の多くは、地下にしみ込んだ雨水が長い時間をかけてろ過された地下水です。

名水の風景

1〜12km: 地殻 — 人類が到達できた最深記録

ここから先は、人類が技術的に到達できる限界に近づいてきます。世界で最も深く掘られた穴は、ロシア・コラ半島の超深度掘削坑で 深さ12,262m(1989年に最深記録達成)。それでも地球半径6,371kmの 0.2%にも届きません

この深さで温度は180°Cを超え、岩石は熱で軟らかくなりはじめます。実際、コラの掘削はドリル先端が予想以上の高温にやられて、ここで停止しました。

一方、光も酸素も届かないこの層にも生命はいます。「地下生命圏(deep biosphere)」と呼ばれ、岩の隙間に染み込んだ水の中で、水素や鉄、硫黄からエネルギーを取り出して生きる微生物が確認されています。地下2〜3kmの岩盤からも検出されており、地球上の全微生物量の大きな割合を占めると予想されています。

30km〜6,371km: 地殻の底からマントル、外核、そして内核へ

12kmから先は、人類はまだ直接見たことがありません。それでも、地震波が地球内部を通り抜けるときの速度変化から、内部の構造はかなり詳しくわかっています。

  • 〜30〜40km(地殻の底・モホ面): 大陸地殻の下端。岩石の組成がここで急に変わる境目です
  • 〜2,900km(マントル): 高温だが基本は固体。ただし長い時間スケールでは飴のように流動し、地表のプレートを動かしています
  • 〜5,150km(外核): 液体の鉄とニッケル。この対流が地球の磁場を作り、太陽風や宇宙からの荷電粒子を弾いてくれています
  • 〜6,371km(内核): 固体の鉄。温度は約5,400°Cで太陽の表面とほぼ同じ。それでも溶けないのは、圧力が地表の約360万倍に達しているからです

地球内部構造図

おわりに

私たちが普段歩いている地面は、半径6,371kmの地球の、ほんの上澄み数m。スコップで届く範囲のすぐ下から、もう別の世界が始まっています。

次に庭で穴を掘るときは、その先にどんな温度・圧力・住人がいるのかを、少し思い出してみてください。

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