富士山の山頂では、水が沸騰する温度が100℃じゃない!?

富士山の山頂は標高3,776メートル。毎年、多くの登山者がこの高い山を目指します。ところで、富士山の山頂でお湯を沸かすと、海抜0メートル(海面と同じ高さ)では約100℃で沸騰する水が、およそ87℃で沸騰するって知っていましたか?

これは、気圧と沸点の関係から生じる、とても不思議な現象です。

気圧と沸点の関係を見ていく前に、そもそも、水が「沸騰する」とはどういうことなのでしょうか?

水を加熱していくと、水の中の分子たちはどんどん元気になり、水面から次々と飛び出して水蒸気に変わっていきます。これが「蒸発」です。 温度が上がるほど、この「蒸発しよう!」とする勢い(蒸気圧といいます)は強くなっていきます。そして、その勢いが上から押さえつけている空気の圧力(気圧)に追いついた瞬間、水面だけでなく水の中からも一気に気体へと変わり始めます。ボコボコと泡立つ、あの現象です。これが「沸騰」の正体です。

つまり沸騰は、水の中から湧き上がろうとする力と、上から押さえつける気圧との、いわば「綱引き」の結果なんです。この綱引きの勝敗を左右するのが、まさに気圧というわけです。

鍋の中の湯気

気圧と沸点の関係を解き明かそう!

では、水が「沸騰する」とはどういう事かを知ったところで、早速気圧と沸点の関係を、もっと詳しく説明しましょう。 では例として、鍋に入れた水を温めて沸騰させる場合を考えてみましょう。

気圧が高い場所では、上から空気がしっかり押さえつけているので、水の分子は勢いよく蒸発しないと外に飛び出せません。だから、より高い温度にならないと沸騰しないのです。

気圧が低い場所では、上からの空気による圧力が弱いので、水の分子は簡単に逃げられます。低い温度でも、分子たちは「さあ、蒸発しよう!」と逃げ出してしまう。ですので、気圧が高いときに比べて、より低い温度で水は沸騰する事になります。

つまり富士山の山頂では、高度が高いから沸点が下がるというわけではなく、気圧が低いから、沸点が下がっているんです。

切り立った雪山の崖

山頂での調理は大変?

さて、富士山の山頂で沸点が約87℃になるということは、調理にどんな影響があるでしょうか?

麺やお米を調理するとき、100℃のお湯で十分に加熱することが重要です。でも、山頂では、約87℃で水が沸騰してしまうので、水を100℃に温めた時は水蒸気になってしまっています。つまり、約87℃のお湯しか用意できません。すると、麺やお米に火が通るのに、より長い時間がかかってしまいます。

登山者たちは、このことを知っているので、山頂でカップラーメンを食べるとき、指定の待ち時間より長く待たないと、麺がしっかり茹であがらないことがあります。 山頂での調理風景

富士山だけじゃない!世界の山での沸点は?

富士山だけでなく、世界中の高い山でも、この現象は起きます。

エベレスト(標高およそ8,849メートル)の場合、沸点はなんと約70℃!富士山よりもさらに低いんです。

モンブラン(標高およそ4,807メートル)では約84℃。キリマンジャロ(標高およそ5,895メートル)でも約80℃程度。

こうして見ると、高い山での活動は、私たちが想像以上に大変だと分かります。登山者たちは、この沸点の低さに対応するため、特別な調理器具を持って行ったり、十分に加熱された食べ物を事前に準備したりしているのです。

沸点を知ることで見える世界

おさらいです。富士山の山頂で水が87℃で沸騰するのは、気圧が低いからです。気圧が低いと、水の分子が液体から気体に変わりやすくなるので、沸点が下がります。

物理の法則は、身近なところで活躍しているんですね。もし富士山に登ったり、高い場所で生活している人々を見たときは、お湯の沸き方や、調理の様子をよく観察してみてください。