土の中にはどれほどの細菌がいるのだろう??
庭や公園の土をスプーンですくってください。その一杯分の土の中には、いったいどれほどの細菌がいるのでしょうか? 小さじ1杯(約5g)の土の中には、目に見えない細菌が1億~10億個ほどいると考えられています。 土の中にこんなに細菌がいる理由は、土が細菌にとって「最高の住まい」だからです。土のつぶとつぶのすきまは、細菌にとってちょうどいい隠れ家です。落ち葉や根から出る養分もあり、水もしみこんでいます。 土の質や湿り具合によって細菌の数は変わります。栄養たっぷりで湿った土には、乾いた砂漠の土よりも、ずっと多くの細菌が暮らしているのです。

細菌は「自然界の後片付け人」?
土の中の細菌たちの代表的な仕事のひとつが、「分解」です。
秋になると、木の葉が茶色くなって落ちてきます。また、虫や動物が死ぬと、その体は土に埋まります。しかし、その落ち葉や死んだ虫や動物は、時間がたつとなくなっています。これは、土の中の生き物たちが力を合わせて「分解」しているからです。
そして、この分解の働きによって、落ち葉や死骸の中に閉じこめられていた窒素やリンが、植物の根が吸収できる形に変わります。その栄養は土の中の水に溶けこみ、根から吸い上げられていきます。つまり、細菌は「自然界の後片付け人」であり、同時に「植物の栄養配達人」でもあるのです。
もし細菌がいなかったら、世界は落ち葉や死骸でいっぱいになってしまい、植物も栄養不足で育たなくなるでしょう。細菌なしには、地球の生態系は成り立たないのです。
細菌だけじゃない!土の中の微生物チーム!
土の中には、いろいろなタイプの微生物が住んでいます。
たとえば『放線菌』。これも細菌の一種ですが、カビのように細い糸をのばして育つ、少し変わった細菌です。かたい植物の繊維など、ほかの菌が分解しにくいものを分解するのが得意です。
また、糸状菌、いわゆる「カビ」も土の中の微生物の仲間です。
『菌根菌』という特別なカビもいます。植物の根にくっついたり、根の中に入りこんだりして、細い糸を土の中に長くのばします。その糸が、根では届かない場所からリンや水を集めて植物にとどけてくれるのです。 ただし、タダではありません。植物のほうも、光合成でつくった糖を菌根菌にわたしています。おたがいに助け合う『交換』の関係なのです。
このように、土の中では細菌、放線菌、カビなどの微生物たちが、チームを組んで働いています。それぞれが違う役割を果たしながら、一緒に落ち葉や死骸を分解し、植物が栄養を吸収できるようにしているのです。

農業に細菌が大活躍!?
こうした土の微生物の力を活かす農業が、最近注目されています。
従来の農業では、化学肥料をたくさん使ってきました。化学肥料は、必要な栄養をすばやく届けられる便利なものです。ただし化学肥料だけを使い、落ち葉やたい肥などの有機物を土にもどさないでいると、微生物のエサが少なくなり、だんだん土の力が弱まっていくことがあります。
一方、微生物農業では、土の微生物の活動を大切にします。落ち葉やわら、動物の肥やしなどを土に混ぜて、微生物の食べ物をたくさん与えます。すると、細菌や放線菌、カビなどが活発に働いて、これらを分解し、栄養豊かな土をつくり出すのです。
このように作られた「肥えた土」では、野菜がじょうぶに元気に育ちます。栄養がとくに多くなるかどうかはまだよくわかっていませんが、微生物が多い土は、植物の病気が出にくくなることがあるとわかっています。

家庭菜園でも、この原理を活かすことができます。キッチンの生ゴミ(野菜の皮など)を土に埋めておくと、微生物たちが分解してくれて、栄養豊かな土になります。また、枯れた草や落ち葉を土の上に敷いておくと、これが分解されて栄養になるのです。
さらに、「コンポスト」という方法もあります。生ゴミや落ち葉などを容器に入れて、微生物に分解させる方法です。数ヶ月すると、栄養たっぷりの「堆肥」ができあがります。この堆肥を土に混ぜれば、素晴らしい家庭菜園ができるのです。
土の中には、目に見えないほど多くの生き物が働いています。私たちは普段、土の上を歩きながら、この素晴らしい「見えない世界」について考えることはありません。でも、小さじ1杯の土の中に何億もの小さな生き物がいることを知ると、土に対する見方が変わります。
土は、無数の生き物が働く「生きた世界」なのです。そして、その生き物たちのおかげで、私たちは野菜を食べられ、花が咲き、地球が生きているのです。次に庭や公園の土を見たとき、その中にはどんな生き物たちが働いているのか、想像してみてください。